事業構想大学院大学教授 重藤 さわ子(第3371号 令和8年8月31日)
自治体を取り巻く環境は激変している。地方創生はもとより、環境・経済・社会にまたがる複雑かつ多様な課題に対応するためにも、人材の育成と確保の重要性はこれまで以上に高まっている。
昨年度、全国町村会「今後の地域政策のあり方に関する研究会」の現地調査として、地域の個性を生かした独自の取組を展開する、小規模ながら活力ある自治体をいくつか訪問する機会を得た。それらの自治体に共通していたのは、人材育成に力を入れ、職員の意欲を引き出し、若手や女性も生き生きと活躍できる風通しの良い組織文化であった。
そうした自治体では、職員が地域の魅力や取組を夢中になって語る。その熱意や誇りが地域の魅力をさらに際立たせ、人を惹きつける力となっている。実際、大学や企業などとの連携も活発で、移住者だけではなく、関係人口や外部支援者の厚みにつながっていた。
一方で、多くの自治体は少子高齢化と人口減少に伴う財政制約に直面し、業務負荷は年々増加し「人材育成どころではない」「研修に行く余裕もない」という声も少なくないだろう。しかし、どれほど厳しい状況であっても行政は地域を支え続けなければならないし、厳しい状況を打開する鍵もまた、人材育成にあることは間違いない。
厳しい時代だからこそ、地域に最も必要なのは未来を描く力である。筆者が教員を務める事業構想大学院大学では、日本経済低迷の要因の一つとして、企業が自ら未来を構想する力を失ったことを指摘しているが、これは地域にも当てはまるのではないだろうか。地域の未来を描けない自治体に未来はない。調査で訪れた自治体では、地域の未来を見据えて自ら構想し、その実現に向けて副業として地域の事業に挑戦する職員の姿も見られた。
国は、社会人の学び直しやリスキリングを支援するリカレント教育を推進しているが、自治体職員にとって、そのような機会はまだ限られている。自治体は単なる行政サービスの提供主体ではなく、「地域の未来を構想し、課題解決を牽引する」地域最大のシンクタンクである。人口減少と変化の時代において、その知恵と構想力を支える自治体職員のリスキリングこそが、これからの地域づくりの基盤となるのではないだろうか。